シリーズ5回目となる今回のテーマは、“気圧”について。
例によって“目に見えない”、“イメージしづらい”、だから“分らない”の三拍子が揃っています。
ただ、だからと言って、“まぁ、いいか”と曖昧な理解で流すわけにもいかないところ。
先々、色々な単元の学習で“顔をのぞかせてきます”。
たった一つの“知識”を理解できているかどうかが、今後の学習にどれほど大きな影響を与えるか。
今回は、それを感じていただきたいと思います。
空気にも重さがある!?
そう言われても、正直なところ“ピントきませんよね”。
重さどうこうの前に、まず空気自体が目に見えない。
そんな状態で長々と説明され、“気体は圧力の高い方から低い方に向かって吹き出す”などと言われても、結局“分ったような、分らないような”。
こんな感じで“流してしまっている人”は多いと思います。
ですが、当然“これではマズイ”。
どのくらいマズイか、具体例を通して見ていきます。
具体例
「空気の入った容積が500㎝³のスプレーの空き缶から出した空気を集めると、1,000㎝³のペットボトルが一杯になったところで、ちょうど空気は出なくなり、缶の中の圧力とペットボトルの中の空気の圧力の大きさが、外の空気の圧力と同じになった」。
今回は問題の解説がメインではないので、とある問題の一部を抜粋したものになります。
ここで確実に出るであろう疑問が、“500cm³のスプレー缶から、なぜ1000cm³の量の空気が出てきたのか”ということ。
学習した“気体は圧力の高い方から低い方に向かって吹き出す”という知識が、本当に使えるものになっているかどうかが、“ここで試されています”。
よく分らないという方は、以下の“置き換え”でイメージしてみてください。
電車と乗客数でイメージ
例えば、“満員電車”とは、どのような状態でしょうか。
座席がすべて埋まっている状態でしょうか?
おそらく、ほとんどの方がイメージする満員電車は、“ぎゅうぎゅうに押し込まれた”通勤ラッシュ時のような状態ですよね。
つまり、“座席がすべて埋まっている状態”というのは、“満員”という状況ではなく、実際には“座れない”というだけで、“まだまだ入れる状態”にはあるということです。
先ほどのスプレー缶の話も“これと同じ”。
500cm³という大きさですが、じっさいにはそれ以上の空気を押し込むことが出来ます。(だから、結果として1000cm³分の空気が出てきたというわけです。)
すると、缶の中は“ぎゅうぎゅうの状態”。
気圧は高い状態になっています。
満員電車であれば、次の駅に着いた瞬間、扉が開いたと同時に押し込まれていた乗客が“吹き出してきます”。
スプレー缶の場合も同じ。
スプレー缶の中の気圧がペットボトル内の気圧よりも高かった結果、スプレー缶内の空気がペットボトル内に流れたというわけです。
そして、1000cm³分の空気が出たところでストップしたのは、缶の中の圧力と外の空気の圧力とが等しくなったことで、空気の出入りがなくなったということ。
電車で言えば、“満員”の状態から、“満席”にまで落ち着いた状態をイメージしてください。
結論
“たかが一つの知識”と思うかもしれません。
ですが、その知識がその後の学習にどれだけ影響してくるか、生徒たちには分りません。
“気圧”についての知識は、“天気”などの単元でも出てきますが、ここで理解出来ていなければ当然、そこでも理解出来ないということになります。
だからこそ、ここぞのポイントは強調するわけですが、強調しても伝わっていなければ、“していないのと同じこと”。
“苦手意識”や“勘違い”を起こす前に、“一撃で仕留める”。
それを意識して、ここぞの場面ではそれが出来るよう、日々“準備しておきたい”と思っています。